HOME | ABOUT TRC

About TRC

台風科学技術研究センターとは

ABOUT TRC

 

台風科学技術研究センターとは

横浜国立大学高等研究院に設置された【日本で最初の】台風専門研究機関です。

台風科学技術研究センターの母体となる先端科学高等研究院は2014年10月に創設され、リスク共生の考え方に基づいて、21世紀社会におけるリスクへの合理的な対応の在り方および安全・安心で活力ある持続可能社会の実現に供する研究を開始しました。2018年度から第2期に移行し、リスク共生の考え方に基づく社会価値イノベーション創出へ向けた研究を推進しています。この精神に則り、台風科学技術研究センターは、「台風災害リスクの低減による安全で活き活きとした持続的な社会構築への貢献、台風エネルギーの活用による脱炭素社会実現への貢献を目的として、2021年10月に設置しました。
台風科学技術研究センターでは、日本全国の台風研究者と、電気化学・船舶工学・法学・経済経営学という本学の特色ある研究が研究目標を共有して協働するとともに、先端科学高等研究院のユニットや他の先進技術研究センターとも連携を図りながら、新たな台風に関する学術領域開拓と新技術の社会実装を加速する研究拠点とします。世界に先駆けた独自性の高いテーマにフォーカスした台風研究の推進によって、国内外に当研究センターのプレゼンスを示し、日本初の台風専門機関として台風研究を牽引します。
 

台風科学技術研究センターがもたらす4つの貢献

①台風災害リスクの低減による「安全・安心で活力ある活き活きとした持続可能的な社会実現への貢献」

台風の理解と予測・シミュレーション技術向上によって、災害リスクを事前に把握してその対策を実施するフレームワークを構築します。その結果として、悲惨な災害への脅威を可能な限り取り除き、今後は台風の激甚化が予想される中で、自然やリスクと共生することを可能にするものです。日本で暮らす人々が安全で活き活きとした生活を送ることのできる持続可能な社会の創出に大きく寄与するものであると確信しています。

②新しい再生可能エネルギーの創出による「脱炭素社会への貢献」

地球温室効果ガス削減目標に向けて、日本は2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略を推進していくことを発表しています。グリーン成長戦略では、再生可能エネルギーのより積極的な導入と効率的な運用を掲げていますが、2050年にカーボンニュートラル社会を実現するためには、既存の再生可能エネルギーの効率的な運用だけでなく、新たな発想での再生可能エネルギー取得方法についての研究開発が必要です。巨大なエネルギーを持つ台風から効率的にエネルギーを取得することができれば、「台風」を新たに再生可能エネルギーのラインナップに加えることが可能になります。日本は、ほぼ毎年のように巨大なエネルギーを持つ台風が来襲すること、広大な排他的経済水域を有しているという、台風発電を実現する上では、非常に有利な国であるといえます。これまでエネルギーに乏しい国と称されてきた日本が、脅威を恵みに変えるというまさに逆転の発想で脱炭素社会における自然エネルギー大国として名乗りを上げることは十分に可能です。

③台風イノベーションによる「技術大国日本の復活に貢献」

我が国の科学技術力は、論文の量や質、各種競争力指標等、国際比較において凋落が著しいのが現状です。その中で日本の科学技術力、産業競争力を復活させるためには、中国、米国などがこれまで20年以上に渡り地道に行ってきた研究開発への投資と人材の育成が必須です。一方で、今の枠組の中で既存の産業技術力を高めるというのはなかなか難しいのも事実です。本センターが推進する技術開発を通じては、これまでとは全く異なる社会の実現が促されるため、市場が新しく創出され、全く新しい技術・製品が必要となります。この新たな技術、産業において日本は再度技術で世界を牽引する存在を目指すべきであると考えます。台風被害の減災と活用(発電)を実現することは、このチャンスをもたらすものであり、凋落傾向にある日本の産業を活気づけ、技術大国日本の復活に繋がるものと考えています。そして日本発の新技術が、台風被害を受けている世界の国々にも同様に恵みを分け与えるものとなると確信しています。

④産学シームレスでの研究による「世界で戦える人材育成に貢献」

本センターが種々の活動を行う中で、若手の研究人材および起業人材が育成されます。まず、本センターの目標達成には気象学、計算機科学、船舶海洋工学、航空工学、経済学、社会学といった既存の領域を横断した科学技術的・社会的課題の解決が必要であり、センターでの研究上の取り組みが、戦略的な研究人材育成の場として機能することが期待されます。さらにイノベーションを研究対象とする社会科学分野の研究等も含まれ、裾野の広い研究が展開され活性化が見込まれます。
また、研究成果の社会実装のための事業化、あるいは研究開発途上で生み出されるバイプロダクトを活用したスタートアップ創業が促されることで、研究開発への投資を呼び込み、安定した持続型の研究開発が可能となり、研究を加速させると考えられます。研究人材の育成と同様に、これら事業化を担う起業人材の育成と登用も目標達成に至るプロセスにおいて促進されると見込まれます。
研究人材、起業人材いずれの育成の場合においても、我が国の産業競争力回復のポテンシャルをもつ本目標を達成するための具体的な課題に若手世代が取り組むことで、世界で戦える実践的な人材育成がなされると期待されます。
 

台風科学技術研究センターの構成

台風科学技術研究センター内には、主たる研究開発テーマに分けた以下の6つのラボ、台風観測研究ラボ (Typhoon Observation Research Laboratory)、台風予測研究ラボ (Typhoon Prediction Research Laboratory)、台風発電開発ラボ (Typhoon power-generation Development Laboratory)、社会実装推進ラボ (Social Implementation Laboratory)、地域防災研究ラボ、台風データサイエンスラボを設置しています。また、それを活動支援チームがサポートし、アウトリーチや研究プロジェクトの側方支援を行います。
 

台風観測研究ラボ

ラボ長 坪木 和久(名古屋大学 教授)

台風観測研究ラボでは、台風などの熱帯低気圧及びそれらと関わる豪雨や雲・降水システムに関して観測的研究およびデータ解析研究を実施します。ラボ長は台風を航空機観測を日本で初めて行った名古屋大の坪木和久教授です。台風観測研究ラボは、航空機観測ミッションチーム、船舶観測ミッションチーム、衛星観測解析チーム、観測用航空機開発チームで構成します。この航空機観測ミッションチームと観測用航空機開発チームは、台風の航空機観測で実績がある名古屋大学や琉球大学らを中心とします。船舶観測ミッションチームでは観測船を保有し、長年、熱帯海域の船舶観測を続けてきた海洋研究開発機構を中核とします。衛星観測解析チームは北海道大学などが牽引します。

台風予測研究ラボ

ラボ長 佐藤 正樹(東京大学 教授)

台風予測研究ラボでは、台風を高精度で予測するための研究・技術開発を行います。台風シミュレーション研究の第一人者である東京大学の佐藤正樹教授がラボ長として牽引し、台風予測チーム、災害予測・影響評価チーム、データ同化チーム、台風気候変動チーム、Beyond Forecastingチームで構成します。台風予測チームは東京大学大気海洋研究所などが中心となります。災害予測・影響評価チームは京都大学防災研究所や東京大学生産技術研究が中核を担います。データ同化チームは琉球大学や理化学研究所が中心となります。台風気候変動チームは海洋研究開発機構などが中心となります。Beyond Forecastingチームは横浜国立大学や慶応義塾大学などが牽引します。
 

台風発電開発ラボ

ラボ長 満行 泰河(横浜国立大学 准教授)

台風発電開発ラボでは、洋上の台風を追従し、巨大な台風エネルギーから発電や蓄電をするための研究・技術開発を行います。ラボ長には、船舶システム研究のホープである横浜国立大学の満行泰河教授が率い、発電開発チーム、蓄電・送電開発チーム、台風発電船開発チーム、台風発電システムインテグレーションチームで構成されます。IAS内の既存の先進化学エネルギー研究センターとも連携し、台風のエネルギーを資源とした発電や蓄電、その技術研究を担い、気象学的側面から脱炭素社会の構築を推進するための新しい技術を研究します。さらに、台風発電を行う新しい目的を持った船舶や海洋構造物のコンセプト設計から実装までを、企業や他の研究機関と連携しながら開発し、我が国の海事産業の活性化も目指します。
 

社会実装推進ラボ

ラボ長 真鍋 誠司(横浜国立大学 教授)

社会実装推進ラボは、他の3つのラボの活動から得られた研究成果を社会に導入する際の受容性に関する諸課題を検討し、社会実装を推進します。横浜国立大学の真鍋誠司教授が社会実装推進ラボをまとめます。リスク共生チーム、産業界連携プラットフォームチーム、法的・社会的課題チーム、国際協調課題チーム、教育・アウトリーチチームで構成されます。IASのリスク共生社会創造センターとも連携し、新エネルギーシステム導入に係わるリスクマネジメント、規制や規格の提案などに関し、協力体制を構築します。また、社会価値創出のために、産業界の巻き込みは必須であり、連携により社会実装の具現化を進めると共に、社会価値創出に対する学術的な考察も行います。さらに、台風にまつわる災害・防災、さらに未来の社会構築に関する知見やアイデアを教育現場でどう展開するかなどのアウトリーチも行います。
 

地域防災研究ラボ

ラボ長 筆保 弘徳(横浜国立大学 教授)

地域防災研究ラボは、台風などさまざまな自然災害の実態解明とそれを引き起こす要因の理解を研究し、災害軽減に向けての解決方法を提案します。横浜国立大学の筆保弘徳教授がラボ長として牽引し、京都大学防災研究所、防災科学技術研究所、あいおいニッセイ同和損害などが中心となります。地域特性の強い風水害に関わる課題に対して、災害メカニズムの追求を目指した基礎的研究に取り組み、社会における問題解決を目指した実践的な研究を実施します。また地域防災研究ラボは、千葉大学、お茶の水女子大学などと連携した“環東京湾アライアンス”の枠組みの中で、東京湾地域における防災活動の取り組みを推進します。人間活動と一体となった新しい防災・減災の実現においては、教育が極めて重要な役割を担うと考えられ、防災教育も行います。
 

台風データサイエンスラボ

ラボ長 吉田 龍二(横浜国立大学 准教授)

台風データサイエンスラボでは、データサイエンスによって台風災害に対して耐性が高く、安全で安心な社会の実現を目指した研究・技術開発を行います。気象予測・防災予測の精度向上、用途の多様化、そしてパーソナライゼーションのために、台風に関連するあらゆる利用可能なデータを検討し、機械学習を応用してデータの集約、統合、利活用を行います。気象・気候データの機械学習適用をいち早く進めている海洋開発研究機構などと協力し、最先端の機械学習を適用します。また、社会への情報発信と社会との協調において豊富な経験と実績を持つ国立情報学研究所と協力します。さらに、TRCで開発されたプロダクトなどの発信も行います。

 

筆保弘徳
台風科学技術研究センター センター長

台風による災害は地球温暖化に伴いますます激甚化してきており、国や自治体により様々な台風防災・減災の対策が講じられていますが、台風は依然として脅威の存在です。一方見方を変えれば、台風は自然エネルギーの塊であるので、その巨大なエネルギーを資源として活用できれば、脱炭素社会の実現に寄与する再生可能エネルギー源の確保につながります。そこで台風科学技術研究センターでは、台風を人類にとって「脅威」の存在ではなくし、さらにはエネルギーをもたらす「恵み」へと変貌させた、安全・安心で持続可能な活力ある社会を実現することを目指します。また、高度先端技術の社会実装までを見据え、研究開発の途上で得られる副産物の活用検討や事業化、法制・倫理的な枠組みの整備検討などを行います。技術的にも社会的にも解決すべき課題が数多くありますが、幅広い分野の専門家が協力しあい総合的な解決を図ることが、実現につながる道筋だと考えています。皆様からのご期待に応えられるように、使命感をもって取り組んでまいります。